名古屋市中村区の内科・小児科|亀島駅2分
052-459-3312スタチンは、高コレステロール血症の治療薬として広く使用されており、心臓病や脳卒中の予防に大きく貢献する重要な薬剤です。
一方で、筋肉への障害(副作用)が発生する場合があることも知られています。この記事では、スタチンによる筋障害の概要や症状、対処法など、患者さんが知っておくべきポイントを解説します。
スタチンは血中のLDLコレステロール(“悪玉”コレステロール)を低下させ、動脈硬化を予防する効果が期待される薬です。しかし、その一方で筋肉に影響を及ぼす可能性があり、軽い筋肉痛から横紋筋融解症に至るまでさまざまな症状を引き起こすことがあります。
以下のように、筋障害には段階的な分類があります。症状の程度やCK(クレアチンキナーゼ)値の上昇度合いによって重症度が変わります。
最も一般的な症状で、筋肉の痛みや不快感を感じる段階。血液検査では特に異常が見られないことが多いです。
四肢・体幹の筋力低下を含めた症状のことを指します。
筋肉に炎症が生じる状態。
最も重篤な状態で、筋肉組織が壊死し、大量のミオグロビンが血液中に放出されることで腎障害を引き起こす危険があります。
スタチンによる筋障害の発生頻度は、症状の程度によって異なります。以下は目安となる数字です。
軽度の筋肉痛:服用者の2〜11%程度
中等度の筋症状:1〜5%程度
重度の筋壊死:0.5%未満
横紋筋融解症:0.1%未満
ただし、個人差が大きく、患者さんによってリスクは変わります。
気になる症状があれば早めに医師へ相談しましょう。
スタチンによる筋障害は、以下のような要因を持つ方で特に起こりやすいことが報告されています。
一方で、プラバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチンはミオパチーのリスクが最も低いとされています。理由としては、代謝経路の関係で、薬物相互作用の影響を受けにくいことなどがあります。
スタチンによる筋障害の典型的な症状には、以下が挙げられます。
多くの場合、服用開始から数週間〜数ヶ月以内に現れやすいとされています。筋肉痛、筋力低下、および血清CK濃度は通常、薬物中止後数日から数週間で正常に戻りますが、一部のケースでは数ヶ月かかる場合があります。また、スタチン関連ミオパチーといって、スタチンの中止にも関わらず、四肢・体幹の筋力低下が数か月かけて進行していくものもあるため、注意が必要です。
早期発見のために筋障害を早期に発見し、重症化を防ぐためには、以下の点に注意が必要です。
・普段と違う筋肉痛や筋力低下がないか
・日常生活で動作が困難になっていないか
・尿の色が濃く(コーラ色)なっていないか
・全身の倦怠感が強くなっていないか
これらの症状に気づいた場合は、自己判断せずに早めに担当医へ相談してください。
2022年に発表された大規模なメタ分析によると、スタチンを服用している患者さんの約27.1%が中央値4.3年の間に、少なくとも1回の筋肉の痛みや筋力低下を訴えています。しかし、プラセボ(偽薬)群でも26.6%が同様の症状を報告しておりました。そのため、スタチンを服用しているからといって必ずしもスタチンが悪さをして筋痛や筋力低下を引き起こしている、とも簡単には言えないところがあります。そこで以下に具体的対応を記載していきます。
スタチンを服用中に筋肉症状が出たり、採血でCK(CPK)値が高くなった場合、以下のステップを参考にしてください。
服用開始から数週間以内に出ることが多いですが、数ヶ月後に発症する例もあります。典型的な症状は以下の通りです。
症状の程度やCK値によって対応が異なります。
症状の程度やCK値によって対応が異なります。
継続服用しながら経過観察、定期的な血液検査を行います。あるいは、別のスタチンへの切り替えも検討します。
CK値が正常上限の
4倍以上10倍未満
医師は症状・検査値等に応じて、服薬継続・中止を検討し、2~6週程度で再評価します。再評価の段階での症状やCK値に応じて、服薬中止や減量、別のスタチンへの切り替えを考えます。主治医とよく相談することが必要です。
K値が正常上限の10倍以上
即時に服用中止が必要です。入院を考えなければいけません。
上記でCK値に応じた対応を記載しましたが、一方でCKの上昇は、スタチン以外にも以下の要因で起こることがあります。
これらのため、CK値の上昇度合いと症状の有無、併存疾患などを総合的に判断し、投薬の継続や中断を検討します。
筋障害の中で最も危険とされるのが横紋筋融解症です。骨格筋が急激に壊死・融解することで、ミオグロビンが血液中に大量放出され、腎臓に大きな負担をかけて急性腎不全を招く恐れがあります。
スタチンによる横紋筋融解症の発症率は0.001%程度と極めて低いですが、一度発症すると重篤化する可能性があるため、早期発見が非常に重要です。
左右対称に、筋肉痛や筋力低下が現れたり、普段の動作が急に困難になる場合は要注意です。
疑われる場合は、直ちにスタチンの服用を中止し、医療機関に相談する必要があります。
スタチンによる筋障害が疑われる場合、特に以下の症状を自覚したら、早めに担当医に相談しましょう。
・両側性の筋痛、筋力低下
・手足に力が入りにくい、
立ち上がりがつらい
・尿の色が濃く変化
・全身の強い倦怠感
・症状の詳細と経過
・服用中の薬やサプリメント
・生活習慣の変化(運動量、食生活など)
・併存疾患(感染症、
甲状腺機能低下症など)の有無
血液検査:CK値、肝・腎機能、
甲状腺機能など
尿検査:腎機能評価
症状や検査結果に応じて、投薬の一時中止や減量、別のスタチンへの切り替えなどを検討します。
また、投薬を中止した場合でも症状が改善すれば、低用量からの再開や投与間隔の変更など、医師と相談しながら柔軟に治療方針を決めることも可能です。
スタチンによる筋障害は、ごく軽い筋肉痛から横紋筋融解症まで幅広く存在します。重篤な副作用の頻度は低いものの、発症した場合のリスクが高いため、
早期発見と早めの対応が欠かせません。
特に高齢者や併存疾患のある方は注意が必要ですが、スタチンは動脈硬化による心血管疾患を防ぐ重要な薬ですので、自己判断での中断は避け、定期的な検査と医師との連携を大切にしてください。
もし気になる症状があれば、一人で悩まず、すぐに担当医に相談しましょう。適切なモニタリングとフォローアップがあれば、多くの場合、安全にスタチン治療を続けることができます。
名駅ファミリアクリニックでは、患者さんのお話をよくお聴きしながら、なるべく実現しやすいアドバイスや治療を行っていきたいと考えております。初診・再診とも、WEB予約、またはお電話で受付を行っております。