名古屋市中村区の内科・小児科|亀島駅2分
052-459-3312小児の気管支喘息(以下、小児喘息と書きます)とは、気道狭窄が発作的に起こり、息をするときにゼーゼー・ヒューヒューいったりする症状などをくり返す病気です。
お子さんにこのような症状が生じる場合、大人とは異なる特徴もあるので注意が必要です。
小児喘息にはどういった特徴があり、どんなことに注意していけばよいのか。日々の生活ではどのように対応していけばいいのかお伝えしていきたいと思います。
小児喘息には、咳が続いたり、息をするときにぜーぜー・ヒューヒューいったり(喘鳴)、息を吐く時間が長くなったり(呼気延長)する症状がよくあります。
そして、症状が進むと息苦しくなったりする(呼吸困難)こともあります。症状が出てくる時間帯にも傾向があり、喘息による咳は夜から明け方にかけて悪化する傾向があります。これらの症状が、運動や気道感染、ハウスダストなどのアレルゲン吸入や気候の変動によってくり返すようなら、喘息を疑う要因であると診断します。
喘息にかかりやすい方について、以下のようなことが挙げられます。喘息には特定の遺伝因子の関与が報告されており、親御さんが喘息持ちの場合、その発症リスクが3~5倍高くなります。
また、生まれてきたときに体重が少ない場合も、喘息発症のリスクが高まりますし、肥満もリスクのひとつになります。
さらに、アトピー素因といって、様々なアレルギーの原因(アレルゲンといいます)に反応しやすい体質の場合も、喘息にかかりやすくなります。実際に見られる小児喘息では、このアトピー素因の関与が非常に大きいです。
また、過去にRSウィルスやライノウィルスといったウィルスに感染したことがある方も、喘息を発症するリスクが高まります。
小児では、男児のほうが女児より喘息が多くみられます。これは一般的に、男児のほうが女児と比べて気道が狭いからです。10歳以降では男児の気道は女児と同じくらいの気道になり、有病率の男女差がなくなっていくと考えられています。
ちなみに成人の喘息では女性のほうが男性よりも多いという反対の特徴があります。
小児が喘息を発症したり、喘息になった人が、発作を起こしやすくなったりする原因には、以下のようなものがあります。
喘息の原因になるアレルゲンとして、様々なものが報告されています。
具体的には、ダニ、イヌ、ネコ、ハムスター、モルモットといった動物性のもの、アルテルナリアなどの真菌(カビ)、スギ・ヒノキ・カモガヤ、ブタクサ、ヨモギなどの花粉があります。
特にダニは、喘息に関与する主要な室内アレルゲンであり、その除去対策が大切で、こちらは後述します。
喘息の発症に関係しているウィルスとしては、RSウィルスやライノウィルスなどが挙げられます。RSウィルスは発熱のほか、鼻水が大量に出るようになったり、喘息発作のような喘鳴や咳を認めることがあります。
さらに、症状が進行すると呼吸困難になることもあります。ライノウィルスは風邪の原因として非常に多くありふれたものです。
タバコの煙や蚊取り線香、自動車の排気ガス、調理器具や暖房器具などから出る煙などは、喘息発作の誘因になることが知られています。また黄砂が喘息の悪化に関与しているという報告もあります。
気象の変化(曇り空、台風、気温の急変など)と喘息発作には因果関係があることが知られていますが、その具体的なメカニズムはまだわかっていません。気温の急な変化について、前日と比較して3℃以上低下した日や、過去5時間以内に3℃以上気温が低下した場合に発作が起こりやすいです。
最後に、運動は短時間の喘息発作を引き起こすリスクになり、すべての喘息患者さんに起こりうるものです。
これは、運動するときに大きく息をすることで、冷たく乾燥した空気を過剰に吸入し、それが刺激となって気管支の収縮が生じて起こるのではないかと考えられています。
その他、診断の目安となる検査としては、鼻水や痰の中に好酸球というアレルギーに関与する細胞がいるかどうかの検査や、ピークフローといって、大きく息を吸い込んで、その息を思い切り速く吐き出すときの息の速さを計測する検査、さらに肺機能検査といって1秒間にどれだけ息を吐ききれるかや肺活量がどれくらいあるかをチェックしたりする検査などがあります。
以上のようなことを総合的に考えながら、病院では喘息の診断をしていきます。
しかし、小児喘息は、その発症のピークが1~2歳までにあるにも関わらず、乳幼児では体の特徴などから喘鳴が起こりやすいため、喘息の診断は非常に難しく、喘息が疑われてからも、常に他の疾患の可能性を考えていく必要があります。
そのような背景がある中で、2歳未満の喘息について、以下のようなことが事前に確認できれば診断の大きな助けになります。
これに加えて、以下のことがある場合は、より喘息の診断に有用となります。喘息の治療は、急に出てくる発作に対する治療と、気道を整え症状がない状態を維持する長期的な治療に分かれます。
治療は発作の強さに応じてより強めていきます。発作の強さは以下の表のように、4段階に分かれます。
小発作 | 中発作 | 大発作 | 呼吸不全 | ||
---|---|---|---|---|---|
呼吸の状態 | 喘鳴 | 軽度 | 明らか | 著明 | 減少または消失 |
陥没呼吸※1 | なし~軽度 | 明らか | 著明 | 著明 | |
呼気延長 | なし | あり | 明らか | 著明 | |
起坐呼吸※2 | 横になれる | 座位を好む | 前かがみになる | ||
チアノーゼ※3 | なし | なし | 可能性あり | あり | |
呼吸数 | 軽度増加 | 増加 | 増加 | 不定 | |
呼吸困難感 | 安静時 | なし | あり | 著明 | 著明 |
歩行時 | 急ぐと苦しい | 歩行時著明 | 歩行困難 | 歩行不能 | |
生活の状態 | 話し方 | 一文区切り | 句で区切る | 一語区切り | 不能 |
食事の仕方 | ほぼ普通 | やや困難 | 困難 | 不能 | |
睡眠 | 眠れる | 時々目を覚ます | 障害される | ||
意識状態 | 興奮状況 | 正 | やや興奮 | 興奮 | 錯乱 |
意識低下 | なし | なし | ややあり | あり | |
SpO2(酸素飽和度)※4 | ≧96% | 92~95% | ≦91% | <91% |
※1 息を吸うときに胸がペコペコへこむ呼吸
※2 息苦しいため、座った状態で行う呼吸
※3 血液の酸素の濃度が低下して、指先や口まわりが青紫色になる症状
※4 酸素の取り込み具合をみる指標
発作時の治療は、気管支を広げる薬(β2刺激薬)が基本ですが、発作の強さにより、ステロイドの点滴・内服治療を加えたり、それ以外のお薬を使用していったりします。
気道の炎症を抑え、症状が起きないようにする、長期的な管理には、生活環境改善や薬物療法があります。生活環境の改善などについては、最後の項目でお伝えし、ここでは薬物療法について紹介します。
長期管理で使用するお薬には、ロイコトリエン拮抗薬という内服薬、吸入ステロイド、長時間作用型のβ2刺激薬などがあります。
喘息発作の程度や、発作が起きる頻度、また年齢によって、治療を選択していきます。
喘息症状のコントロール状態の評価には、以下の項目で考えていきます。
評価項目 | コントロール状態 | ||
---|---|---|---|
良好(すべての項目が該当) | 比較的良好 | 不良(いずれかの項目が該当) | |
軽微な症状(※1) | なし | 月1回以上、週1回未満 | 週1回以上 |
明らかな喘息発作(※2) | なし | なし | 月1回以上 |
日常生活の制限 | なし | なし(あっても軽微) | 月1回以上 |
β2刺激薬の使用 | なし | 月1回以上、週1回未満 | 週1回以上 |
※1 運動や大笑い、泣いた後や起床時に一時的にみられることがあってもすぐになくなる咳や喘鳴、
あるいは、短時間で目が覚めることがない夜間の咳き込みなどを指す。
※2 咳き込みや喘鳴が、昼夜にわたって続いたりくり返したりする、呼吸困難を伴う喘息症状を指す。
コントロール良好な状態で3か月以上維持できれば、お薬の減量を考えていきます。
ただし、喘息発作の症状が重かった場合や、季節の変化に伴って症状が悪化する場合などには、治療の延長も考えます。
喘息発作は、早期から治療を行うことによって悪化を防ぐ、早期発見早期治療の対応が重要です。
そのためには、まず強い喘息発作のサインについて知っておくことによって早期に治療にかかる手がかりとなりえます。その具体的なサインについてご紹介します。
以上のようなサインがあれば、直ちに受診することをお勧めします。
また必要によっては救急車の要請がいる場合もあると思います。β2刺激薬の吸入薬・内服薬が手元にあれば、受診の準備をしながら治療していきましょう。
上記のようなサインがない場合、手元にβ2刺激薬など発作時の頓服薬がなければ、病院受診をお勧めします。
β2刺激薬があれば、その治療効果で、以下のように対応していただければと思います。
評価 | 初期治療への反応(吸入15分後、内服30分後) | |||
---|---|---|---|---|
良好 | 不十分 | 不良 | ||
症状 | 消失 | 改善するが残存 | 不良あるいは悪化 | |
次の対応 | 吸入薬あり | 8~12時間間隔で治療 |
1~2時間後に治療 | 直ちに受診の準備を(20分~1時間後に吸入可) |
内服薬のみあり | 8~12時間間隔で治療 | 4~6時間間隔で治療し受診の準備を | 直ちに受診の準備を | |
受診のタイミング | 発作をくり返す場合は早めに受診 | 軽快しない場合は受診を | 直ちに受診 |
最後に、日常生活の中で小児喘息を改善できるポイントについて、いくつかお伝えしたいと思います。
まずは室内アレルゲンであるダニ対策・カビ対策、そして運動による発作誘発対策について、お伝えしたいと思います。
室内のダニの中でも、チリダニ類(ヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニ、ヒヨウヒダニ、シワダニなど)は、ハウスダストに含まれるダニ類の90%を占めます。チリダニ類が繁殖しやすい環境は、温度25℃前後、湿度75%前後です。
一方、アレルゲンとなる大部分のカビが繁殖しやすい環境は、温度25~35℃、湿度70~90%です。これらのため、部屋の湿度を50%程度にすることが一つの対策になります。
また、床や畳の掃除機かけは、3日に1回以上、20秒/m2のペースで時間をかけて行うことが望ましいです。寝具に関しては、1週間に1回は、20秒/m2のペースでかけていただき、さらに防ダニ布団・カバー・シーツの使用も大切です。ダニのアレルゲンは水に溶けるため、布団の丸洗いも重要です。
運動は、子供の成長発達にとって様々なメリットがあり、制限するのではなく、発作誘発に注意をしながら、積極的に運動できるようにしていくサポートが重要です。
症状が強い場合には、専門医によるアドバイスが必要になることもありますが、運動による症状の出現を和らげる基本的な予防策について、以下にまとめました。
軽い症状が出る程度のウォーミングアップを行うと、実際に運動するときには軽くなることが知られており、重要です。
運動を行う15分前にβ2刺激薬の吸入を行うと、運動による誘発が抑えられます。ロイコトリエン受容体拮抗薬などの使用も予防に有効であり、症状に応じて使用していきます。
マスクを使用することで、気道からの水分の蒸発を防ぐことができ、結果的に予防策となります。しかしマスクでは苦しくて運動しづらくなることも懸念され、適応には限りがあります。
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