アトピー性皮膚炎はどうやってコントロールしていく?その原因と症状とは?

アトピー性皮膚炎は非常にありふれた疾患であり、耳にする機会も多いのではないでしょうか?

アトピー性皮膚炎は、症状が良くなったり悪くなったりをくり返す、痒みのある湿疹を主体とする疾患で、多くの方はアトピー素因というものを持っています。

これは、自分自身または家族の方が、気管支喘息やアレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、または複数を持っていたり、あるいはIgE抗体という、アレルギー反応に関わる物質を産生しやすい素因があることを指していいます。

皮膚のバリア機能低下で起こりやすくなる

アトピー性皮膚炎が生じている皮膚では、皮膚の一番外側の層である、角層の機能障害が起こっています。

角層とは皮膚の表面に存在する厚さ10~20μmという薄い膜状の構造物で、十数層の死んだ角層細胞が落ち葉を敷き詰めるように重なり合っており、その間を埋める角質細胞間脂質により成り立っています。

この角層には、物質が皮膚に浸透する(透過する)ことに対するバリア機能があります。このバリア機能は、セラミドなどの角質細胞間脂質によります。

アトピー性皮膚炎がある皮膚では、このセラミドの低下があり、水分含有量の低下もみられます。そのためアトピー性皮膚炎の皮膚は乾燥しています。

アトピー性皮膚炎は、遺伝的要因に加え、環境要因が重なって発症します。

遺伝的要因としては、例えばフィラグリンと呼ばれる角質の主要な構成成分の遺伝子変異の関連が指摘されています。

フィラグリンの働きは、水分保持や、強度や柔軟性、皮膚のpHなどたくさんあります。

フィラグリンがない状態では、角層細胞ははがれやすくなり、物質が皮膚に透過しやすくなってしまい、その結果皮膚が乾燥しやすくなってしまいます。

遺伝的要因以外に、様々な発症因子、悪化因子が推測されていますが、個々の患者さんによってその状況は異なります。

小児期の前半では、食べ物や汗、掻きむしったりする物理的刺激、細菌・真菌(カビ)など、小児期後半から成人期では、汗や物理的刺激、細菌・真菌、ストレスなどが影響し、対策が重要です。

かゆみがなぜ強いのか?

アトピー性皮膚炎には強い痒みが生じます。これは痒みの閾値の低下(痒みを我慢できる限界点が低下すること)があるためと言われています。

痒みは皮膚の温度上昇(入浴や運動、就床、軟膏を塗布した後などによる)や、汗刺激によって生じます。また羊毛製の衣類が皮膚に当たるときにも生じます。

何かに集中しているときには痒みは減りますが、リラックスしているときに増えることも特徴です。

痒みがあると、皮膚を掻きむしってしまいやすくなり、掻破してしまうと皮膚炎が悪化しさらに痒くなってしまうという、負のスパイラルに入ってしまいます。このように痒みはアトピー性皮膚炎の最大の問題と言えます。

他の皮膚病や、合併症のこともあるので注意

ここで、アトピー性皮膚炎の診断基準についてお伝えしていきましょう。
ガイドライン上、アトピー性皮膚炎は、以下の1~3を満たす場合に診断します。

1.掻痒がある

2.特徴的皮疹と分布

① 皮疹は湿疹病変

  • 急性病変:紅斑、湿潤性紅斑、丘疹、漿液性丘疹、鱗屑、痂皮
  • 慢性病変:浸潤性紅斑・苔癬化病変、痒疹、鱗屑、痂皮

② 分布

  • 左右対称性がある
    好発部位:前額、眼囲、口囲・口唇、耳介周囲、頸部、四肢関節部、体幹
  • 参考となる年齢による特徴
    乳児期:顔、頭に始まりしばしば体幹、四肢に下降
    幼小児期:頸部、四肢関節部の病変
    思春期・成人期:上半身(顔、頸、胸、背)に皮疹が強い傾向

3.慢性・反復性経過(しばしば新旧の皮疹が混在する)

乳児では2ヶ月以上、その他では6ヶ月以上を慢性とする。

医学用語が多く、わかりにくいところもあるかもしれませんが、アトピー性皮膚炎が少しイメージいただけるでしょうか。
しかし、アトピー性皮膚炎に症状が似ている病気はたくさんあります。以下、その一部をお伝えしていきます。

・接触性皮膚炎
いわるる「かぶれ」で、ほとんどの場合、かぶれの元になるものと接触している場所に、境界が明瞭な湿疹ができます。そのため通常全身に病変が分布したり、左右対称になったりすることはまれです。
・疥癬
これはダニ(ヒゼンダニ)による感染症です。指間、体幹の柔らかい部位に、大変強い痒みが伴う丘疹(直径10㎜以下の皮膚のもりあがり)が多発します。掌、足の裏に小さな水疱ができることもあります。疑わしい場合は病変部位をサンプルし、顕微鏡で確認します。
・汗疹(あせも)
多汗症の人や、乳幼児に多いです。エクリン汗腺という汗を出す腺が詰まる(閉塞する)ことによって生じます。頸部や体幹、腋窩などに、数㎜大の紅い丘疹が多発します。汗がたくさん出る状態が改善されると自然に消失することもあります。
・手湿疹
いわゆる「手荒れ」で、美容師や調理師、主婦など、水仕事や手を使う職業の人に多いです。しかしアトピー性皮膚炎がある場合、これを合併していることがあります。
・皮脂欠乏性湿疹
皮膚の乾燥によって生じる湿疹で、冬場高齢者にみられることが多いです。下腿(すね)や前腕、脇腹などに生じやすいです。やはりアトピー性皮膚炎でも合併する場合があります。

これらのように、アトピー性皮膚炎に似た疾患や合併症はたくさんあり、判断が難しい場合は皮膚科へご紹介させていただくこともあります。

症状をコントロールしていくポイントは?

では、アトピー性皮膚炎の治療とケアにはどのようなものがあるのでしょうか?
その治療の基本は、

  1. 症状が悪化する要因を可能な限り減らし、
  2. 皮膚を保護し(スキンケア)、
  3. それでも改善が難しければ薬を使って治療する。

の3つになります。

1. 悪化する要因を可能な限り減らす

ここでは主な悪化因子とその対策についてお伝えしていきます。

温度による掻痒

既にお伝えしたように、温度が高まると痒みを生じることがあります。
特に入浴で悪化することは多く、対策としてはお風呂の温度を40℃以下にしたり、せっけんの使用を最小限度にしたりします。

汗による悪化

汗そのものも悪化因子ですが、汗をかくときは皮膚の温度上昇も同時に起こっており、また日光に当たっていることも悪化因子になります。タオルなどで汗や汚れを拭き取ったり、洗い落としたりすることが対策になります。

物理的刺激による悪化

皮膚に過度の刺激を与えたり掻きむしったりすると症状が悪化します。また、シャツの袖口が皮膚に当たったり、前髪がまぶたに触れたりすることも症状を悪化させることがあります。そのためできるだけ皮膚への刺激を避けるようにします。

ストレス

ストレスで皮膚炎の炎症が強くなったり、痒みが強くなったりすることがあります。
ストレスは心理的なケアが必要な場合もあり、慎重にお聴きしていく必要があります。

2. 皮膚を保護するためのスキンケア

スキンケアは、肌の乾燥に対するケアと、既にアトピー性皮膚炎の炎症が起こっている部位に対するケアの2つに分かれます。

乾燥に対するケア

乾燥している肌には、保湿性の高い塗り薬を使用していきます。保湿剤は肌が水分で潤っている入浴直後(5~15分以内)が良いですが、時間が経って塗っても効果に差がないという報告もあるようで、塗り忘れずなるべく早めに塗るのが一番です。

1日1回よりも1日2回塗ったほうが保湿効果は高く、症状に応じて塗る回数も考えていきます。

入浴では、皮膚が温まり過ぎると痒みが出てくるため、概ね38~40℃が良いでしょう。
体を洗うときは皮膚を刺激しないように、タオルで皮膚表面を強くこすらず、泡で汚れを取る程度が良いです。

ただしシャンプーやせっけんの洗い残しは症状が悪化する場合があるので注意します。

炎症部位のケア

炎症が起きている部位には、ステロイド外用薬を基本として使用し治療していきます。
この際、炎症の強さと、皮膚炎の部位に応じて塗り薬を使い分けていきます。

炎症がさほど強くない場合(少し赤みがある程度など)は、やさしめのクラスのステロイド外用薬を使用し、炎症が強い部位はより高いクラスのものを使用します。

皮膚の部位によってステロイド外用薬の吸収率に差があります。陰部が最も吸収率が高く、次いで頬部、首まわり、脇、頭皮、という順になり、皮が厚い足底がもっとも吸収されにくいです。

プロアクティブ療法について

アトピー性皮膚炎が生じている皮膚に、ステロイドなど、炎症を抑える塗り薬を使用し、見た目の皮膚がきれいに戻ったように見えても、その皮膚組織を顕微鏡で見てみると、まだわずかに炎症が残っていることがあります。

そのためすぐに保湿剤に切り替えてしまうと、その炎症のくすぶりが再燃してすぐにぶり返すことがあります。

そこで、すぐにステロイド外用薬などをやめるのではなく、しばらく(2~4週程度)2日に1回塗り続け、皮疹が出なければ3日に1回に減らしていくという、少しずつゆっくりと塗る頻度を減らす治療法を、プロアクティブ療法といいます。

もし塗る頻度を減らしていく過程でぶり返してしまったら、もう一度連日使用していき、再度1日おきにしていきます。

このプロアクティブ療法は、従来の再燃してからステロイド外用薬などを使用する治療法(リアクティブ療法)と比べ、再燃回数が少なく、再燃するまでの期間が長く、結果的にトータルで使用するステロイド外用薬などの量が少なくて済むと言われています。

アトピー性皮膚炎の方にはこの治療法についてお伝えし、治療とケアをしていきます。

名駅ファミリアクリニックでのアトピー性皮膚炎の治療は?

名駅ファミリアクリニックで大切にしていることは、個々の方で、生活状況が異なるため、その方の生活に根差したケアや治療が必要となってくるということです。

アトピー性皮膚炎は慢性の経過の疾患であり、その方の生活に負担がかかるようなら治療の継続が難しくなります。

生活視点に立ちながら、先にお伝えした、悪化因子対策やスキンケア、各種外用薬を使用した治療を行っていきます。痒み症状が強い場合は、痒み止め(抗ヒスタミン薬)を使用する場合もあります。

しかし感染が疑われる場合や、治療に難渋する場合には、皮膚科にご紹介させていただくこともあります。

日々の生活の中で心がけることとは?

「症状をコントロールしていくポイント」でお伝えしたことがセルフケアの基本となりますが、その他の対策としては、次のようなものがあります。

どのようなときに掻いてしまうか意識してもらう

患者さんにお話しをお聴きすると、痒みが強くなるタイミングが決まっている方がいます。仕事から帰ってくると痒くなる、とか、お酒を飲んでから痒くなる、とか、家に帰ってから掻くと落ち着くので掻いている、など。

このようにお話をお聴きすることで状況を客観視していただけるようになり、一定のタイミングが見えてきたら、例えば痒くなる1時間前に痒み止め(抗ヒスタミン薬)を飲んでいただくなど対策が取りやすくなることがあります。

爪を短く保ってもらう

当然と言えば当然ですが、爪は長くなると汚れてしまいやすく、清潔に保っていただくことが重要です。

以上のように、個々の患者さんに応じて、普段の生活を行いながらセルフケアできるように、治療とアドバイスを行っていきます。

参考文献
一般社団法人日本アレルギー学会アトピー性皮膚炎ガイドライン専門部会作成.アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2015.協和企画,2015
佐藤伸一編.別冊・医学のあゆみ アトピー性皮膚炎UPDATE.医歯薬出版,2016

筆者プロフィール

院長:田島光浩

平成19年 信州大学医学部卒業卒後臨床研修の後、平成21年より名古屋大学総合診療科後期研修プログラム(日本プライマリ・ケア連合学会家庭医療専門医後期研修認定プログラム)にて後期研修を行う。 その間、名古屋大学総合診療科、愛知県がんセンター愛知病院緩和ケア内科、名古屋掖済会病院小児科、名古屋医療センター総合内科などで勤務。平成25年日本プライマリ・ケア連合学会家庭医療専門医・指導医取得。

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