脂質異常症といわれたらどうする?続けやすい自己対策から病院での治療は?

脂質異常症は自覚症状がないため、健康診断などで初めて指摘されることが多いと思います。そのため生活習慣の見直しや治療が遅れ遅れになりがちな疾患でもあります。

しかし、脂質異常症を放っておくと、少しずつ動脈硬化が進んでいき、脳梗塞や心筋梗塞といった重病になってしまいかねないものです。

脂質異常症とはどういったものなのか、放っておくとどうなるのか、どういった対策があるのか。医師の立場からご紹介していきたいと思います。

脂質異常症とはなにか?

悪玉コレステロール(LDL)や中性脂肪(トリグリセライド)の数値が高いと、動脈硬化性疾患のリスクが高く、以前は高脂血症と言われていました。

しかし、善玉コレステロール(HDL)の場合は、逆に数値が低くなり過ぎると動脈硬化性疾患のリスクになり、名前が矛盾しておりました。

そのため、これらを包括した疾患として、脂質異常症といわれるようになりました。

LDL高値や中性脂肪高値、HDL低値は、食習慣の欧米化や運動不足、肥満(特に内臓脂肪型)、体質などを原因として生じます。

脂質異常症が引き起こすのは、動脈硬化のリスクです。
動脈硬化の状態が続くと、狭心症や心筋梗塞、脳卒中、末梢閉塞性動脈疾患(足先などの細い動脈の血流が悪くなる病気)といった病気になりやすくなります。

つまり、脂質異常症を治療していく目的は、将来的になりうるこれらの動脈硬化性疾患を予防するためなのです。

脂質異常症の診断基準

日本動脈硬化学会による、脂質異常症の診断基準(空腹時の採血)は、以下のようになります。

LDL 140mg/dL以上 高LDL血症
120~139mg/dL 境界域高LDL血症
HDL 40mg/dL未満 低HDL血症
中性脂肪 150mg/dL以上 高トリグリセライド血症

ここで重要なことは、この基準はあくまでも、将来動脈硬化性疾患(特に狭心症や心筋梗塞といった冠動脈疾患)の発症を促すリスクが高いレベルとして設定されたものであり、ただちになにか病気が発症していることを表しているわけではなく、集団健診などのスクリーニング検査(大勢の中から、その病気の疑いのある人を早く発見する手段)に使用するものだということです。

そのため、この基準に引っかかってしまったからといって、他の病気のようにすぐに治療を始める必要があるわけではありません。治療を始める基準は、個々の患者さんの年齢や基礎疾患などによって異なってきます。

放っておくとどうなるのか?

先にお伝えしたように、脂質異常症の治療の目的は、あくまでも動脈硬化の予防のためです。
脂質異常症を放っておくと、動脈硬化が進みます。

動脈硬化がどういう状態かといえば、血管の壁にコレステロールがたくさん付着していき、血管の内側(血液の通り道)が細くなっていったり、プラークと呼ばれるかたまりができたりします。

コレステロールに富むプラークは壊れやすく、破裂すると血のかたまり(血栓)が生じて血管が閉塞してしまいます。血流が完全に遮断されてしまうと、細胞が栄養を受け取れなくなり、死んでしまい、心筋梗塞や脳梗塞といった病気になってしまうのです。

自分でできる続けやすい対策法

脂質異常症は、生活習慣を改善すること自体が第一の治療になります。
生活習慣の改善には、食事療法や運動療法などがあり、これから詳しくお伝えしていきます。

食事療法で最初に行うことは?

最初に、1日にどれくらいのカロリー量を摂取すればいいかについて考えていきます。
まず標準体重を計算します。これは、

標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22

で求めることができます。この体重が目標の体重になります。
標準体重に、25~30を掛けたものが、1日に必要なエネルギー量(kcal)です。当然活動量が多い方のほうが、必要なエネルギー量も多くなります。
例えば、身長170cmの人であれば、

標準体重=1.7×1.7×22≒63.6(kg)
1日に必要なエネルギー量=63.6×25~30≒1600~1900(kcal/日)

というふうに計算できます。

では肥満のある方が、いきなりこの必要エネルギー量を目指せばいいのかというと、そうではありません。

もともとの摂取カロリーが高く、食事制限が厳しいと、筋肉の中のたんぱく質が分解されてしまい、筋肉が落ちてしまいます。さらに厳しいと、骨を分解してエネルギーにしてしまいます。

筋肉が減ってしまうと、基礎代謝量が低くなり、基礎代謝量が落ちるとエネルギーの消費量が減ってしまい、結果的にやせにくい体を作ってしまいます。

この状態で制限前の食事量に戻ると確実に太ってしまい、しかも多くの場合、脂肪ばかりが増えてしまいます。

そのため減量のスタートとして、現状から1日に250kcal程度減らすことから始めます。1か月あたり体重1㎏前後の減量が予想され、まずはこれくらいが無理のない減量になります。

また、食事制限は何かに偏るわけではなく、6大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維)をバランスよく摂取するのが大切です。そのため、できることなら少量ずつ多品種が良いです。
次にその6大栄養素と脂質異常症の関係についてご紹介したいと思います。

炭水化物は総カロリー量の半分は摂り、特に米飯がおすすめ

炭水化物は体内でブドウ糖に分解され、エネルギー源として使われますが、中性脂肪も合成されます。
炭水化物は単糖類、二糖類、多糖類に分かれますが、単糖類が最も速く吸収されやすく、多糖類が一番吸収が遅いです。多糖類には穀類やいも類、豆類などの主成分である、でんぷんなどがあります。

総摂取量の約半分は米飯やパン、麺類などの炭水化物から摂るようにします。やはり体のエネルギー源として重要なので、減らし過ぎるのは逆効果になってしまいます。

パンより米飯の方が消化吸収が遅いため太りにくく、中性脂肪を減らすという点ではお勧めです。

米は磨かれていないほど(精製度が低いほど)食物繊維やビタミンが豊富に含まれているため、精白米より玄米食がお勧めです。

食物繊維は、後述するように、コレステロールの吸収を抑える働きなどがあり、非常に大切な栄養素です。

パンは食パンよりライ麦パンや全粒粉のほうが食物繊維が豊富であり、麺類は、うどんより蕎麦のほうが食物繊維が豊富です。

タンパク質はアミノ酸スコアの高い食材から摂る

タンパク質は、体の筋肉や血液の材料になるだけでなく、体が円滑に機能するためのホルモンや酵素などの原料となる重要な栄養素です。

毎日消費するエネルギーで、最も割合が大きいのが基礎代謝です。筋肉量が増えると、この基礎代謝が高まります。したがって、たんぱく質を十分に摂り、筋肉を増やすと、基礎代謝が高まり、内臓脂肪の蓄積を抑え、太りにくくなります。

成人に必要なたんぱく質の量は、1日当たり、適正体重1㎏あたり1~1.5gです。しかし、たんぱく質はただ摂取すればよいのではなく、その質が大切です。

タンパク質は、約20種類のアミノ酸という物質が結合し合ってできています。アミノ酸の中には、体内で作ることができるものもあれば、体内では作れないものもあります。

タンパク質を摂る場合、体内で作れない9種類の必須アミノ酸が理想的な配分で含まれている食品を摂取していったほうが良く、この食品を、「アミノ酸スコア」が高い食品といいます。

アミノ酸スコアが高い食品は、動物性タンパク質では、牛肉・豚肉・鶏肉・あじ・いわし・サケなど。植物性タンパク質では、枝豆・おから・豆腐・納豆などがあります。

脂質はバランスよく

脂肪の種類は、中に含まれる脂肪酸によって決まります。脂肪酸には、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の2種類があります。

飽和脂肪酸を摂り過ぎると悪玉コレステロールであるLDLが増え、不飽和脂肪酸は逆にLDLを減らす働きがあります。

不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分かれ、多価不飽和脂肪酸はさらにオメガ3やオメガ6などに分かれます。

不飽和脂肪酸のうち、特に悪玉コレステロールを減らす作用が強いのは多価不飽和脂肪酸です。特にオメガ3脂肪酸は、青魚に多い「EPA」や「DHA」といった種類のものがあり、中性脂肪合成を防ぎ、また血液をサラサラにする作用があります。

ただし、気をつけなければいけないのが、不飽和脂肪酸の中でも、トランス脂肪酸は摂り過ぎた場合に逆に悪玉コレステロールが増えて善玉コレステロール(HDL)が減るといわれています。

トランス脂肪酸は主に油脂を加工・精製する工程ででき、マーガリンやスナック菓子、マヨネーズ、ファストフードなどに多く含まれています。

こうしてみるとトランス脂肪酸以外の不飽和脂肪酸だけを積極的に摂ったほうが良いと思われるかもしれません。

しかし、飽和脂肪酸もあまり摂取しないと血管がもろくなりえますし、不飽和脂肪酸も摂り過ぎると肥満の原因になってしまいます。こちらもどの脂肪酸かに偏らせず、バランスよく摂取することが重要です。

食物繊維はなるべく多めに

食物繊維とは、食品に含まれる消化されにくい成分のことです。食物繊維は糖質の消化吸収を緩やかにしたり、有用な腸内細菌叢を増やして腸の運動を高めることなどに加え、コレステロールの吸収を阻害する働きがあります。

食物繊維には、水に溶ける水溶性食物繊維と、溶けない不溶性食物繊維があります。
不溶性食物繊維は便を軟らかくし、腸の働きを活発にし、脂肪やコレステロールなどが腸内に長時間とどまることを防ぎ、結果的にコレステロールや中性脂肪の低下に役立ちます。

水溶性食物繊維はさらにコレステロールを減らす効果が高く、海藻や野菜、くだものに多く含まれています。

ビタミン・ミネラルは抗酸化作用の高いものから優先的に

ビタミンは、たんぱく質や脂質、糖質の体内での働きをスムーズにする役割があります。

またミネラルは、骨や歯を作ったり、体液や神経の調節などをする働きがあります。したがって、これらの栄養素をしっかり摂ることが重要です。

野菜にはビタミンやミネラル、食物繊維がたくさん含まれており、また抗酸化作用もあります。

理想的には1日350gの野菜を摂取し、そのうち緑黄色野菜を120g以上摂るようにすることが推奨されます。

抗酸化作用は美容やエイジングケアにもよく使われる言葉ですが、脂質異常症においても重要な役割を果たします。
私たちが吸う空気の1~2%は活性酸素になるといわれています。活性酸素は悪玉コレステロールであるLDLを酸化させてしまい、それが血管に付着して細胞を傷つけ、結果的に動脈硬化の原因になります。

ビタミンEやCは、特に抗酸化作用の高いビタミンであり、これらを摂取することで、活性酸素による酸化、老化を抑えるとともに、酸化によって傷ついた細胞を修復することにもつながります。

食事療法のまとめ

  • 身長などから、一日の必要なエネルギー量を求めることができる。
  • 6大栄養素それぞれの役割を理解し、それぞれをバランスよく摂取することが重要。
  • 急激で無理な減量をいきなりするのではなく、バランスの良い食事をできる限り目指しながら、少しずつ、腹八分で減らしていく。

じっくり続けることで効果が上がる運動療法

体にたまった脂肪を減らすには、運動が有効で、有酸素運動、筋トレ、ストレッチを組み合わせて行うと効果的です。

ただ、運動療法は効果が現れるのがゆっくりであり、最低でも3か月かかります。ある程度の忍耐が必要ですが、適切な運動を日常生活に取り入れ、継続的に行っていけば、しっかりと効果がでてきます。

また、個々人の基礎疾患によっては運動に制限が必要なものもあり、そのような方は、必ず主治医の先生に相談しましょう。

有酸素運動

有酸素運動は、脂肪をエネルギー源とする運動で、内臓脂肪や皮下脂肪、さらには中性脂肪を消費して減らすことができます。

有酸素運動は、比較的弱い力が持続的に筋肉へかかります。このような運動は、体内の脂肪がエネルギー源になります。有酸素運動を始めると、まず血液中の中性脂肪が燃焼し、20分経つ頃から皮下脂肪や内臓脂肪が燃焼するようになります。

そのため30分くらい続けたほうが中性脂肪を減らす効果が高くなるといえます。

具体的にはウォーキングや水中ウォーキング、ゆっくりとした水泳やラジオ体操などが適しています。

筋トレ

筋トレは筋肉に負荷をかけて行う運動です。酸素を使わない無酸素運動なので、脂肪は燃焼しませんが、筋肉量を増やすことで基礎代謝を上げることができます。

基礎代謝とは、呼吸、体温調整、内臓の活動など、生命維持のための消費エネルギーで、多くは筋肉の熱生産に使われます。そのため筋肉が多い体はそれだけ消費エネルギーが多くなります。

筋トレといっても重い器具を使う必要はなく、自分の体重を使ってスローな動作で行うスロートレーニング(スロトレ)がお勧めです。スロトレは筋肉に力が入り続けている状態を保ち、ゆっくり動かします。

そのため短時間でもきつく感じると思いますが、関節や腱への負担が少ないので運動不足の中高年層の方でも取り組みやすいといえます。

筋トレは1日10分前後を週2~3回行えば良いといわれています。

ストレッチ

運動をする前にはケガなどを防ぐため、ウォーミングアップが重要ですが、運動後に、筋肉にたまった疲労を取るためクールダウンを行うことも重要です。

このどちらにも適しているのがストレッチです。

ストレッチは寝る前に行っても効果があります。これは、普段の生活でも当然筋肉に疲労物質がたまるため、ストレッチで排出を促すためです。

日々の生活の中に運動療法を見出す

以上のように、運動療法についてお伝えしてきましたが、現実的に、普段の生活で改まって30分の時間を作るのは、なかなか難しいと思います。

そのため、普段の生活の中で、少しでも活動量を増やすような工夫をしてみるのが良いと思います。

具体的には以下のようなことを取り入れてみるのはいかがでしょうか。

  • エレベーターやエスカレーターではなく、階段を利用する。
  • 仕事がある人は、昼休みの10分を利用して散歩や筋トレをする。
  • 買い物などは、なるべく歩いて行くようにする。
  • アイロンがけなど座ってしていた作業は、立って行うようにする。
  • 掃除機をかけるだけでなく、モップがけもする。
  • 草むしり、枝はらいなど、庭仕事をする。
  • テレビを観ているときに運動する。

また日々の生活で、以下の3つは経験的に重要だと思います。

経験的に重要だと思われる3つのポイント

1. 毎日体重計に乗る
体重計に乗ると、客観的に数字で体重が把握できます。例えば入浴前に体重計に乗る習慣をつけることで、食事摂取量や運動量による体重の変化を数字で確かめることができ、普段の食事量や運動量への意識が高まりやすいと思います。
2. 寝る前2時間は食事を摂らない
寝る前に食べた食事は、当然カロリー消費されにくいです。また、食べてすぐに寝ると、逆流性食道炎のリスクにもなります。そのため、寝る前2時間は食事を摂らないことをお勧めします。
3. 食事は腹八分にする
もうあと1、2口食べたいな、と思うときに、「今日はここまでで終わらせておこう」と食べ終わることが重要です。最初はなかなか辛いかもしれませんが、だんだん体が慣れてきますし、効果を実感できるようになると思います。

脂質異常症を病院で治療する場合は?

当院では原則、食事療法や運動療法といった、非薬物療法を優先しております。生活習慣の改善をしっかりと行っても、脂質の管理目標を達成できない場合に、薬物療法を考えます。

薬物療法を考えるLDLの目標値は、基礎疾患や年齢、性別、喫煙習慣などによって変わってきます。例えば狭心症や心筋梗塞などの既往がある方は、LDL100mg/dL未満と、厳しい目標値になります。

一方リスクが少ない方であっても、LDL180mg/dL以上が続く場合には、薬物療法を考えるめやすとなります。

脂質異常症の治療薬は非常にたくさんのものがありますが、有名なものとしては、スタチン系の薬やフィブラート系の薬があります。

これらの中には、まれに筋肉障害などきたすものもあるため、定期的な血液検査や症状の発現に注意が必要です。また、腎機能が低下している方や、脱水、お酒の飲み過ぎ、過度の運動などの状況では特に注意が必要です。

脂質異常症はなにを持って改善といえるのか?

脂質異常症は、患者さんの生活背景によってコレステロールの目標値が設定され、そこをクリアすることが、一つのゴールと言えます。

しかし本来、脂質異常症改善の目的はあくまで動脈硬化の予防です。

動脈硬化の予防は、脂質異常症だけではなく、喫煙や飲酒などの生活習慣、高血圧症などの疾患の治療を含めた、包括的な改善が重要です。

とは言え、なかなかお仕事などで忙しい方には、生活習慣の見直しは大変であると思います。
名駅ファミリアクリニックでは、そのような方の日常生活に適した、少しでも役立つようなアドバイスや治療を行っていきたいと考えております。

参考文献
日本動脈硬化学会編集.動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症治療ガイド2013年版.杏林舎,2013
日本動脈硬化学会編集.動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版.日本動脈硬化学会,2017
田中逸著,健診・健康管理専門職のための新セミナー生活習慣病.日本医事新報社,2013
寺本民生編集.脂質異常症診療ガイドQ&A.南山堂,2014
寺本民生監修.患者のための最新医学脂質異常症(コレステロールと中性脂肪)最新の食事療法.高橋書店,2016

筆者プロフィール

院長:田島光浩

平成19年 信州大学医学部卒業卒後臨床研修の後、平成21年より名古屋大学総合診療科後期研修プログラム(日本プライマリ・ケア連合学会家庭医療専門医後期研修認定プログラム)にて後期研修を行う。 その間、名古屋大学総合診療科、愛知県がんセンター愛知病院緩和ケア内科、名古屋掖済会病院小児科、名古屋医療センター総合内科などで勤務。平成25年日本プライマリ・ケア連合学会家庭医療専門医・指導医取得。

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