高血圧症は自覚できる病気~改善するための対策と治療法は?

日本において、高血圧の方は約4300万人いると推定されており、非常に多く遭遇しやすい疾患です。
高血圧が続くと、脳卒中や心筋梗塞など、さまざまな病気を発生させる原因になりえます。

どのような血圧を高血圧というのか、正確に評価するために、自宅ではどうやって測っていけばいいのか、薬以外ではどんな治療法があるのか。このようなことをお伝えしていきたいと思います。

そもそも高血圧症と診断される基準とは?

高血圧症の診断基準は、年齢や基礎疾患によって変わってきますが、以下の表のようになります。ここで注意してほしいのは、診察室で測定した高血圧の数値と、家庭で測定した高血圧の数値で、診断基準が異なることです。

  診察室血圧 家庭血圧
若年、中年、前期高齢者(65歳~74歳) 140/90mmHg以上 135/85mmHg以上
後期高齢者(75歳以上) 150/90mmHg以上 145/85mmHg以上
糖尿病 130/80mmHg以上 125/75mmHg以上
慢性腎臓病で尿蛋白陽性 130/80mmHg以上 125/75mmHg以上
脳血管障害・冠動脈疾患 140/90mmHg以上 135/85mmHg以上

※上の血圧(収縮期血圧)あるいは下の血圧(拡張期血圧)のいずれかが表の数値を満たすこと

高血圧症と診断するには、まず正しく血圧を評価することが重要なのですが、実はここに大きな盲点があります。

血圧が高いと言われたことのある多くの方は、健康診断などの、診察室で測定した血圧の数値をもとにしていないでしょうか?

しかし、血圧は診察室で測定すると、高めに出てしまったり、低めに出てしまったりして、正確に評価するには不十分です。そのためご自宅に血圧計があれば、そちらの数値を優先して診断していきます。

また血圧はバラツキもあり、1機会につき原則2回測定しその平均をとること、できれば朝・夕の2機会で測ること、また1日の値だけをみるのではなく、5日以上の平均値をみることが推奨されます。

一回測定値が高かったからといってただちに高血圧症というわけではなく、疑わしい場合はご自宅で1日2回、5日間以上血圧を測り続けることをおすすめします。

測り続けることで高血圧は自覚可能に!

健診などで測定する血圧は、スクリーニング検査(大勢の中から、その病気の疑いのある人を早く発見する手段)という意味合いが強いです。
健康診断などのスクリーニング検査で血圧が高いことが判明したら、ぜひご自宅での計測をオススメします。

ちなみに名駅ファミリアクリニックでは、健康診断やその他の診察で血圧が高かった場合、無料で一定期間、血圧計をお貸ししております。

高血圧症は、よほどのことがない限り自覚症状を感じることはありません。

しかし、日々計測することを続けることによって、血圧の高低を自覚することができます。ご自宅で計測することで、実際は高血圧ではなかった、という方もいらっしゃいますし、逆に初めて自宅でも高いことがわかった、という方もいらっしゃいます。

また、自宅血圧測定は、季節による血圧の変動や、降圧剤の効果の評価、また日内変動(一日の中で高くなったり低くなったりすること)の評価などができます。

なお、ガイドライン上推奨されている、家庭でのベストな血圧測定について、以下にお伝えします。

測定がオススメできる環境

  1. 静かで適当な室温の環境
  2. 原則として背もたれつきの椅子に脚を組まず座って1-2分の安静後
  3. 会話を交わさない
  4. 測定前に喫煙、飲酒、カフェインの摂取は行わない
  5. カフ位置を心臓の高さに維持できる環境

測定に最適な条件

1)かならず守ること

a. 朝  起床後1時間以内
  • 排尿後
  • 朝の服薬前
  • 朝食前
  • 座位1-2分安静後
b. 晩(就寝前)
  • 座位1-2分安静後

2)追加条件

a. (医師の)指示により、夕食前、晩の服薬前、入浴前、飲酒前など。その他適宜、自覚症状のあるとき、休日昼間、深夜睡眠時など

自分でできる続けやすい高血圧の対策方法は?

薬を使わずにご自身で血圧を下げるには、生活習慣の修正が大切です。各個人で続けやすい方法は異なると思いますが、下記の6つの方法を特におすすめしたいと思います。

1.減塩

日本のガイドラインでは、食塩の摂取量を1日6g未満とすることが推奨されていますが、WHOでは1日5g未満を推奨しております。
石器時代の人類の食塩摂取量は、1日0.5~3gであったそうですが、現代日本の平均は依然10gを超えています。1日6g未満はかなり厳しい目標であり、実際には少しでも是正できれば良いのではないかと思います。

具体的には、

  1. 漬け物は控える
  2. 麺類の汁は残す
  3. 低塩の調味料を使う
  4. 香辛料、香味野菜や果物の酸味を利用する
  5. 外食や加工食品を控える

などがあります。

2.食事

食事ではDASH食に降圧効果があることがわかりました。
DASHとは、Dietary Approaches to Stop Hypertension(高血圧を防ぐ食事療法)の略で、アメリカで研究された食事療法です。

糖分や肉類を少なめに、野菜、果物、豆類、低脂肪乳製品が豊富な食事を摂取すると、血圧が下がることが判明しました
(高血圧症のある方で、収縮期血圧で11.4mmHg、拡張期血圧で5.5mmHgの降圧)。

この食事は、飽和脂肪酸とコレステロールが少なく、カリウム、マグネシウム、カルシウム、食物繊維が多い構成になります。

カリウムやマグネシウム、カルシウムには、それぞれわずかな血圧の降圧作用しかありませんが、これらを複数組み合わせることで、より大きな降圧効果が期待できることが、この研究で示されました。

DASH食は減塩と組み合わせることで、さらに大きな降圧効果が期待できます。
しかし腎機能が低下している方は、カリウムなどのミネラルを摂り過ぎると血中濃度が高くなり過ぎてしまうリスクがあり、注意が必要です。

3.減量

肥満は高血圧のみならず、糖尿病や脂質異常症、慢性腎臓病、睡眠時無呼吸症候群なども合併します。特に内臓脂肪が多いほど、高血圧や脂質異常症、高血糖が多いという報告があり、ウエスト周囲の長さも考慮して減量していくことが重要です。

減量の降圧効果は、ある文献では、約4㎏やせると収縮期血圧で4.5mmHg、拡張期血圧で3.2mmHgの降圧効果が報告されています。
しかし、急激なダイエットはかえって体調を悪くしてしまうリスクもあるため、無理のない減量が重要です。

4.運動

運動は有酸素運動の効果が確立されています。有酸素運動は、降圧効果だけでなく、体重や体脂肪の減少などの効果があります。ある研究では、1日30分早歩きするのをできるだけ毎日行うと、10週間で収縮期血圧が約10mmHg低下した、と報告されています。

ただし、収縮期血圧180mmHg以上、あるいは拡張期血圧110mmHg以上の方は、血圧を下げてから運動することが、ガイドラインでも勧められています。

5.節酒

飲酒習慣は高血圧の原因になります。
アルコールは1回限りであれば、数時間程度血圧低下するといわれていますが、飲酒習慣が長期に及ぶと血圧が上がってきます。
アルコールは男性であればビール中瓶1本まで、あるいは日本酒1合まで、あるいはワイン2杯弱まで、女性はその半分までが推奨されています。

6.禁煙

紙巻きたばこを1本吸うと、15分以上血圧が上がると言われています。禁煙は狭心症や心筋梗塞などのリスクを減らしますが、体重が増えてしまうこともあり、結果的に血圧が上がることがあり、注意が必要です。

その他、血圧は冬季に寒さで上がることがあり、トイレや浴室、脱衣所などでの暖房対策が重要です。

また、ストレスや睡眠不足も血圧上昇や心血管の病気のリスクといわれており、対策が重要です。

入浴に関しては、熱すぎない風呂が良いです。室温20℃以上、湯温40℃以下では血圧はほとんど上がらないと言われており、38~42℃くらいの湯で5~10分くらいの入浴が目安になります。

高血圧の治療法はリスクによって変わる

高血圧の治療目的は、高血圧が続くことによってもたらされる心血管の病気(動脈硬化、心筋梗塞など)を予防することにあり、そのために血圧を目標値に下げる治療を行います。

年齢や基礎疾患によって目標値は異なり、以下の表のようになります。

降圧の目標値 診察室血圧 家庭血圧
若年、中年、前期高齢者(65歳~74歳) 140/90mmHg未満 135/85mmHg未満
後期高齢者(75歳以上) 150/90mmHg未満 145/85mmHg未満
糖尿病 130/80mmHg未満 125/75mmHg未満
慢性腎臓病で尿蛋白陽性 130/80mmHg未満 125/75mmHg未満
脳血管障害・冠動脈疾患 140/90mmHg未満 135/85mmHg未満

※忍容性があれば、前期高齢者と同じ降圧目標値を目指す

すぐに降圧薬を使うかはリスクによって変わる

降圧薬をすぐに使っていくか、あるいは生活習慣の見直しから始めるかを判断するために、以下の表を使ってリスクの層別化を行います。

  Ⅰ度高血圧 Ⅱ度高血圧 Ⅲ度高血圧
リスク第一層 低リスク 中等リスク 高リスク
リスク第二層 中等リスク 高リスク 高リスク
リスク第三層 高リスク 高リスク 高リスク

Ⅰ度高血圧...140-159/90-99mmHg
Ⅱ度高血圧...160-179/100-109mmHg
Ⅲ度高血圧 ≧180/≧110mmHg

各リスク層の解説

リスク第一層

心血管病の血圧値以外に以下のような危険因子がない

  • 高齢(65歳以上)
  • 喫煙
  • 脂質異常症(LDL<40mg/dL、LDL≧140mg/dL、中性脂肪≧150mg/dL)
  • メタボリックシンドローム※
  • 若年(50歳未満)発症の心血管病の家族歴
  • 糖尿病

リスク第二層

糖尿病以外の1,2個の危険因子、3項目を満たすメタボリックシンドローム※のいずれかがある

※メタボリックシンドロームの定義

  • a. 腹囲 男性85cm以上、女性90cm以上
  • b. 脂質異常 中性脂肪150mg/dL以上 かつ/または HDL40mg/dL未満
  • c. 血圧高値 収縮期130mmHg以上 かつ/または 拡張期85mmHg以上
  • d. 高血糖 空腹時血糖値110mg/dL以上

aでありかつb-dのうち2項目以上を満たす場合をメタボリックシンドロームという

リスク第三層

糖尿病、慢性腎臓病、臓器障害※2/心血管病、4項目を満たすメタボリックシンドローム、3個以上の危険因子のいずれかがある

※2 臓器障害の定義

  • 脳、心臓、腎臓、血管、眼底に心血管病がある場合

高リスクの場合は、すぐに薬を使って治療を開始しますが、低・中等リスクの場合は、ご自宅での血圧を記録してもらい、生活習慣の見直しをしてもらいます。それでも高血圧が続くようなら、降圧薬の使用を検討します。

生活習慣の改善については、「自分でできる続けやすい高血圧の対策方法は?」の項で述べたことなどを、日常生活に取り入れてもらいます。

また、名駅ファミリアクリニックには管理栄養士もおりますので、普段の食事についてのアドバイスなども行っていきます。

降圧薬を始めたら、数か月くらいかけて目標値までゆっくり下げていきます。しかし高リスクの場合は数週間以内に速やかに下げていきます。

血圧は季節による変動もあるため、家庭血圧を基に、年間を通して調整していきます。

参考文献
日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会編.高血圧治療ガイドライン2014.ライフサイエンス出版,2014
日本循環器病予防学会編.循環器病予防ハンドブック第7版.保健同人社,2014
Diet in the treatment and prevention of hypertension. UpToDate 19.0

筆者プロフィール

院長:田島光浩

平成19年 信州大学医学部卒業卒後臨床研修の後、平成21年より名古屋大学総合診療科後期研修プログラム(日本プライマリ・ケア連合学会家庭医療専門医後期研修認定プログラム)にて後期研修を行う。 その間、名古屋大学総合診療科、愛知県がんセンター愛知病院緩和ケア内科、名古屋掖済会病院小児科、名古屋医療センター総合内科などで勤務。平成25年日本プライマリ・ケア連合学会家庭医療専門医・指導医取得。

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