病院外来で検査すべき貧血の症状の見分け方とおすすめの対処方法は?

貧血は日常の生活の中でも、なじみのある言葉ではないでしょうか?特に女性の方は貧血になりやすく、毎日だるくて疲れやすいな、と感じてらっしゃる方も多いと思います。

その一方で、自分には貧血なんてまったくない、と思っている方も多いと思います。しかし、実際にお医者さんで調べてみると実は貧血だった...、という方も少なくありません。

また、貧血の原因もよく言われるような鉄分不足だけではなく、さまざまな原因があるのですが、ご存知ですか?

そこで、このページは、貧血にまつわるさまざまな原因と、さらにその中でどんな症状が危険な兆候なのかをまずご紹介したいと思います。

その上で、実際に貧血であるかどうかを病院などで検査していく上で、どういうことを病院で話せばお医者さんによく伝わるのか、さらには、貧血をなるべく薬に頼らず治していくには、どうしていけばいいのかについても医師の立場からご紹介します。

自分の症状が貧血かどうか悩んでいる方から、今後予防していきたい方までご参考にしてみてください。

貧血にも実は多数の原因がある

鉄分不足がよく知られている貧血ですが、実はそれ以外にも多種多様な原因があり、その一部をお伝えします。

1. 鉄欠乏
鉄欠乏性貧血は、体内の鉄量が不足することで生じます。これは鉄の摂取不足だけではなく、消失(消化管出血など)、需要の増加(妊娠など)によっても起こります。
2. ビタミンB12欠乏
ビタミンB12という成分が不足しても貧血が生じます。これは高齢者や胃を手術で取った方に多い貧血で、貧血症状以外にも、認知機能の低下や感覚障害などを引き起こします。
3. 葉酸欠乏
葉酸が不足して生じる貧血は、アルコール依存症の方に多いです。これはアルコールが葉酸の吸収を低下させてしまうためです。その他、高齢者にも多いです。
4. 薬剤性
お薬によっても貧血になることがあります。胃薬・糖尿病治療薬・尿酸を下げる薬・抗生剤・抗てんかん薬などの一部がそうです。このため、お薬を定期的に内服中で貧血のある方は、必ず主治医の先生に相談しましょう。
5. 炎症性
がんなど慢性的に炎症が続いている方でも、貧血になることがあります。このような場合も、必ず病院を受診し、詳しく調べてもらったほうが良いと言えるでしょう。

貧血にはどんな症状がある?

貧血には様々な症状がありますが、例として以下のような症状が出ることがあります。

  • 疲労感が続き、疲れやすい
  • イライラする
  • 肌が乾燥したり、荒れている
  • 白目が青白い
  • 爪が凹んだり、変形している

自分で貧血かどうかを見極めるのは意外と難しい

しかしこれらの症状の多くは漠然としており、他の病気が原因でも現れる場合もありますし、逆に貧血が原因であっても、気づいていない方が多いのが現状です。

例えば、健康診断などで偶然貧血であることが見つかって、病院外来で治療することで症状が改善し、初めて上記のような症状が続いていたことに気づかれる方も多いです。

そのため、自覚症状だけで、自分が貧血であることを見極めるのは難しいかもしれません。

実際に私たちの診察の際にも、しっかりと患者さんのお話に耳を傾け、いつから症状が始まったのか、どのような生活習慣があるのか、これまでにどのような検査を行ってきたのか、などを慎重にお聴きした上で貧血であるかを診断しています。

ただし、これらの中で、特に緊急性が高い徴候や、貧血に比較的特異的な症状が存在します。このような症状が出ている場合には、すぐに病院へ受診することをおすすめします。

病院外来で検査してもらったほうがいい、貧血からくる自覚症状

黒い便が出る

黒い便(黒色便)がみられるとき、消化管からの出血(潰瘍やがんなど)が疑われます。そのうちの約90%は、食道から胃、十二指腸までの部分(上部消化管)からの出血が原因です。しかし、小腸や右側の大腸からの出血でも発生することがあります。

黒色便は、ごく少量の出血であれば認められませんが、50ml程度の出血であれば見られることがあります。 また、ワインやイカ墨などの摂取でも認めることはありますが、消化管出血は急を要する場合も多いです。そのため、内視鏡検査(胃カメラや大腸カメラ)ができる消化器内科へ早めの受診をお勧めします。

便に血が混じる

小腸から大腸までの部分からの出血の場合、便に血が混じる(血便)ことがあります。また、上記の上部消化管からの出血であっても、大量であれば、血便として排出されることがあります。

血便がみられる場合、ポリープや痔によるものも多いですが、がんからの出血の可能性も否定できません。やはり内視鏡検査ができる、消化器内科への早めの受診をお勧めします。

氷食症(氷が無性に食べたくなる症状)

食べ物ではないものを無性に食べたくなる症状を、異食症といいます。そのうち、氷が無性に食べたくなることを、氷食症といいます。

異食症は鉄欠乏の方だけに認められるわけではありませんが、氷食症は鉄欠乏の方に非常に特異的な症状です。また、貧血まで至らない鉄欠乏の方であっても、氷食症の症状が現れることがあります。

ある統計では、鉄欠乏性貧血がある人の6割弱に異食症がみられ、異食症がみられた方の9割弱が氷食症であったという報告があります。

このような症状のある方は、鉄欠乏が疑われ、結果的に貧血の可能性があるので、一度病院で調べてもらうことをお勧めします。

むずむず脚症候群

むずむず脚症候群とは、安静時に手や脚に不快感が生じて、動かしたくなる症状で、特に夕方から深夜に多い症状です。手足を動かすと、その不快感は軽減されるのが特徴です。

日本人の場合、週2回以上症状がある方に限ると、約1%に認められるという報告があります。

むずむず脚症候群の原因はまだはっきりしていませんが、脳などの中枢神経系の鉄不足が指摘されています。また、鉄欠乏性貧血がある方の約24%に、むずむず脚症候群の症状があったという報告もあります。

むずむず脚症候群のすべてが鉄欠乏によるものではありませんが、もしこのような症状が続く方は、一度病院で調べてもらうことをおすすめします。

病院外来ではどのように貧血と、その原因を診断する?

それでは、病院外来ではどのように貧血の診断をするか、さらに原因をどのように特定しているのかご紹介します。

ヘモグロビンの数値で貧血であることを診断する

貧血は採血で簡単に診断でき、その中でもヘモグロビンという赤血球にあるタンパク成分をみます。WHO基準では、成人男子は13g/dl未満、成人女子や小児は12g/dl未満、高齢者では男女とも11g/dl未満と定義されます。

赤血球の大きさや含まれる成分で原因を特定する

MCV(平均赤血球容積)

次に赤血球の大きさ(MCV)をみます。おおむね、MCV<80fLを小球性貧血、80-100fLを正球性貧血、>100fLを大球性貧血といいます。このうち、鉄欠乏性貧血は小球性貧血に分類されます。

LDH(乳酸脱水素酵素)

さらに、赤血球などの細胞に含まれている、LDH(乳酸脱水素酵素)という成分をみます。赤血球が破壊されるような病気(溶血性貧血など)があると、このLDHが高くなります。しかしそれ以外でも高くなることがあり、経過を踏まえ、様々なデータを総合的に診ていきます。

RPI(網赤血球産生指数)

そして、骨髄での赤血球の産生を評価する、RPI(網赤血球産生指数)という値をみます。RPI<2では産生低下を示唆し、>2では産生亢進を示唆します。例えば、鉄欠乏性貧血は鉄という材料が不足しているため、産生が低下しRPIが低くなる傾向があります。

以上のような数値をもとに、貧血の原因を考えていきます。

一番多い原因の鉄欠乏性貧血はどのように診断する?

この中で、非常に多くみかける原因である、鉄欠乏について、もう少し詳しくみていきます。 小球性貧血(MCV<80)の場合、鉄欠乏性貧血が疑われ、以下の検査を追加していきます。

フェリチン

フェリチンは肝臓や脾臓など多くの臓器に広く存在するタンパクで、鉄を細胞内に貯蔵する役割があります。フェリチン<20ng/mLであれば、鉄欠乏性貧血と言えます。

逆にフェリチン>100ng/mLであれば、基本的に鉄欠乏は考えられません。 フェリチン20~100ng/mLである場合、低ければ低いほど、鉄欠乏の可能性が高くなりますが、他の貧血も考えながら、鑑別診断を行っていきます。

トランスフェリン飽和度

鉄は血液の中でトランスフェリンというタンパクと結合して運ばれます。トランスフェリン飽和度は、この結合の程度を評価するものです。トランスフェリン飽和度<15%の場合、鉄欠乏の可能性が高くなります。

これらの数字は診断にも使用しますが、治療経過を追っていく際にも使用していきます。つまり、フェリチンやトランスフェリン飽和度を高めていくことが、貧血を改善していくひとつのベンチマークといえることができます。

一番多い鉄欠乏貧血を予防するための良い食事方法

貧血の原因はさまざまあるものの、やはり一番多い原因が鉄欠乏性貧血です。

これは、鉄分を多く摂ることで解決すると単純に思われがちですが、実はそうではなく、さまざまなコツがあることはご存知ですか?効率的に鉄欠乏貧血を予防するためのおすすめする方法は2つあります。

一度に多く摂るよりも毎日一定量を継続的に摂る

貧血の原因が鉄不足があるからといって、たくさん鉄を摂取すれば、そのすべてが吸収されるかというと、そうではありません。

骨髄が使用できる鉄の量は1日当たり、20~60㎎程度と言われています。また、腸管から吸収できる鉄の量は、1日に10㎎程度です。そのため、食事やサプリメントでたくさん摂取したとしても、全部が吸収されるわけではありません。そのため、一度に多く摂るよりも毎日継続して一定量を摂取することが大事であるといえます。

鉄の種類や、食べ合わせによる吸収率にも気をつける

鉄にはヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があります。ヘム鉄は、赤血球の中にあるヘモグロビンに由来し、赤身肉や魚に含まれています。非ヘム鉄は、豆類やほうれん草などの野菜に含まれます。

ヘム鉄の吸収率は15~35%であり、食事内容による影響をあまり受けません。
非ヘム鉄の吸収率は2~20%であり、食品中のさまざまな成分によって吸収率が大きく変わります。非ヘム鉄は、動物性タンパク質や、ビタミンCと一緒に摂取することで、吸収率を高めることができます。

一方、カルシウム、ポリフェノール類、またお茶などに含まれているタンニンなどは、非ヘム鉄の吸収率を下げますので、同時に摂取すると吸収が阻害されてしまいます。非ヘム鉄を摂取した場合、吸収という面では注意が必要な成分です。

これらのことから、鉄欠乏性貧血を食事によって改善するにはヘム鉄の食材を毎日継続的に一定量を摂ることが最短かつ効率的であるといえます。

なお、どの食材に鉄が多く含まれているかは、インターネットで検索するとたくさん出てくると思いますが、特に文部科学省のサイトにわかりやすく紹介されています。

後述する治療でも同じですが、鉄欠乏性貧血を改善するには数ヶ月以上かかります。上記のことを参考に、日々続けられる食事療法をしていただければと思います。

名駅ファミリアクリニックでの貧血の治療法は?

名駅ファミリアクリニックで貧血を治療する場合、原因や症状の程度によって大きく分かれます。
既に述べたように、血便などの症状に消化管出血を疑う場合などは、内視鏡で調べてもらう必要があり、他病院へご紹介させていただいております。

鉄欠乏性貧血の原因が、月経過多であると、明確に診断がついている方には、トラネキサム酸というお薬を使用することもあります。このお薬を、月経開始から4~7日間内服することで、出血量を、約3割~6割減らせることがあります。

それ以外の場合は、鉄剤の内服によって治療してきますが、できる限りお薬に頼りたくない方も多いと思います。そのような方には、前述したような食事療法をおすすめさせていただいております。

鉄剤で治療する場合は少量からはじめる

お薬で鉄剤を使用する場合には、様々な注意が必要であり、使用前に患者さんに説明をします。なぜかといえば、鉄剤を内服すると、吐き気や食欲低下といった症状が現れる方がいらっしゃるからです。使用量が多ければ多いほど生じやすいため、最初はできるだけ少量で始めるようにしています。

既に述べたように、腸管から1日に吸収できる鉄の量は10㎎程度ですから、少量の鉄剤を、ビタミンCがたくさん含まれている、果物のジュースなどと一緒に摂取することをお勧めしております。
貧血が重度である方や、早期に貧血を改善させなければいけない方には、鉄剤の注射や点滴を行うことがあります。これは注射や点滴のほうが、貧血の改善が速いからです。

貧血の改善は、数週間~3ヶ月程度のスケジュールで

貧血の改善はすぐにはできず、ある程度時間をかけて行う必要があります。以下の表のように、数週間~数ヶ月かけて改善していくため、患者さんと相談し、適宜採血を行い評価していきます。

経過 反応
1週間 ヘモグロビン上昇、MCV上昇
1~2週間 フェリチンの上昇
2~3ヶ月 ヘモグロビンの正常化、MCVの正常化
3ヶ月 フェリチン正常化

鉄を細胞内に貯蔵する役割があるフェリチンが正常化した後、再度減少してこないかを、しばらく経過観察することもあります。貧血治療は長期に及ぶこともあるため、名駅ファミリアクリニックでは、まず患者さんの症状を把握し、しっかりと治療内容をお伝えしながら診療をすすめていきます。症状が気になる方はご来院ください。

参考文献
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高岸勝繁.ホスピタリストのための内科診療フローチャート.Signe,2016
日本、厚生労働省、「「統合医療」情報発信サイト」

筆者プロフィール

院長:田島光浩

平成19年 信州大学医学部卒業卒後臨床研修の後、平成21年より名古屋大学総合診療科後期研修プログラム(日本プライマリ・ケア連合学会家庭医療専門医後期研修認定プログラム)にて後期研修を行う。 その間、名古屋大学総合診療科、愛知県がんセンター愛知病院緩和ケア内科、名古屋掖済会病院小児科、名古屋医療センター総合内科などで勤務。平成25年日本プライマリ・ケア連合学会家庭医療専門医・指導医取得。

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